筆ペンの穂先比較

招待状の宛名を手書きするなら筆ペンがマナーといわれています。
しかし、筆ペンの種類は非常に多く、招待状に向き不向きな筆ペンがあります。さらに、初心者向きと上級者向きがあることをご存知でしょうか?

今回は現役の筆耕士さんに協力をしてもらい、招待状の宛名書きに向いている筆ペンを格付けしていただきました。

宛名書きにオススメの筆ペン ランキング

毛筆で書く結婚式招待状の宛名書きの注意点は、以下の4点が条件です。
  • かすれのない黒い字
  • 宛名は太めに書く
  • 崩しすぎない字体
  • 水に強いインクを使用する(最も重要)

そのため筆ペンインキが水性のものはすべて不適合
以下では、私自身が思う宛名書きに適した筆ペンをランキング形式で紹介します。実際に書いたものに水をかけてインクの流れ具合も確認済です。

※今回の調査は「招待状の宛名書きに使うなら」という前提があります。利用用途によって評価は全く違うものになります

  1. ぺんてる筆<極細>
    ぺんてる筆・極細

    住所も書くとするなら、細字も太字も書き分けやすい。

  2. 呉竹<美文字 完美王>
    くれ竹・美文字 完美王

    持ち軸は太いが、筆毛がほどよい硬さなので、筆ペンを使い慣れていない人でも扱える。1位の『ぺんてる 顔料』と2位の『呉竹 完美王』はほぼ互角です。

  3. 墨運堂<極>
    墨運堂・極

    黒色は一番濃く美しい。筆毛がやわらかいので、初心者が細字を書くには少し難しい。

上記の3本と『ゼブラ 筆サイン(中字)』は、書いた封筒に水をかけてもインクは流れませんでした。
宛名書きではなく、事務的(席札など)に使うのであれば『呉竹 万年毛筆』がおすすめです。

なお、あくまで招待状の宛名書きの使いやすさをレビューしており、その他の利用用途では違った結果になります。

現役筆耕士の筆ペンレビュー 全11種類

調査したのは、インスタの花嫁さまアカウントの中で、有名な11種類の筆ペンをチョイスしました。

比較内容は以下の5項目です。

  • インクのにじみ
  • 太さ
  • 濃淡
  • 硬さ
  • 書きやすさ

ぺんてる筆・中字

ぺんてる筆<中字>

穂先に含ませたインク分しか書けないので、かすれる度にカートリッジを指で挟んで補充する必要がありました。

穂先(ほさき)ぺんてる筆<中字>の穂先
実際の宛名書きぺんてる筆<中字>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。インクだまりができると乾きが悪く、汚れやすい。
太さ 太・細が調整しやすく、太い線でも細い線でも書きやすい。
濃淡 細い線でも濃い黒が均一に出る。
硬さ ちょうどいい硬さ。筆毛がしなやかに動き、太・細字でもスムーズに書ける。
書きやすさ 筆の開き・閉じが容易なので、書きやすい。

染料インキタイプの筆ペンです(スペアインキは別売り)。

ぺんてる筆・極細

ぺんてる筆<極細>

インクが筆に含まれていると書きやすいが、極細のためインク補充(カートリッジを指で挟んで)をする頻度は多くなります。また、インクに粘りがあるため、ペン先にインクが到達するまで水性インクと比べて時間がかかるデメリットも。

穂先(ほさき)ぺんてる筆<極細>の穂先
実際の宛名書きぺんてる筆<極細>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。すぐにインクが乾く。
太さ 相応の太い字でも書ける。太字用の太さは書けない。
濃淡 濃い。はらいなど速い動きで書くと少しかすれがおこる。
硬さ ほどよい硬さ。どちらかと言えばやややわらかい。
書きやすさ 画数の多い文字でも太・細字がしっかり書けるので書きやすい。

顔料インキタイプ(スペアインキ別売り)。60~80℃のお湯に1~2分漬けると穂先調整可能です。

ぺんてる・太字

ぺんてる<太字>

にじみもなく、均一にインクがでるため書きやすい。ただ住所など細い字を書くには、ある程度の技術が必要な上級者向けです。

穂先(ほさき)ぺんてる<太字>の穂先
実際の宛名書きぺんてる<太字>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。穂先が長く毛量が多い分インクを多く含めるので、全体的に乾きが悪く、なかなか乾かない。
太さ 中字より太く書ける。ペン先を使えば細い線も書けるがある程度の技術が必要。
濃淡 濃い。均一にインクは出る。
硬さ 毛量が多く長いが、やわらかく感じる。弾力性がある。
書きやすさ 太いわりには書きやすい。文字が太くなりやすいので、使い慣れないと扱いにくいかも。

染料インキタイプ(スペアインキ別売り)。60~80℃のお湯に1~2分漬けると穂先の調整が可能です。

くれ竹・万年毛筆

呉竹<万年毛筆>

インク調節を気にせずに書けます。
何十人分も書かないといけない招待状の宛名書きには効率がいい筆ペンです。

穂先(ほさき)呉竹<万年毛筆>の穂先
実際の宛名書き呉竹<万年毛筆>の宛名書き
インクのにじみ にじまない。乾きは悪い。
太さ 毛の長さは短いが、根元までおろせば太い字も書ける。細字も書きやすい。
濃淡 色にムラがある。均一でない。インクがたまるところは濃くなる。
硬さ 毛の長さが短いわりには、とてもやわらかく弾力がある。
書きやすさ しなやかに筆が動くため、初心者にとっては書きにくい。使いこなすにはある程度の技術が必要。

染料インキで、スペアインキ二本入り。スペアインキを抜いてから、流水やぬるま湯を何度も替え、インキの色が少なくなるまで洗うと復活します

くれ竹・美文字 完美王

呉竹<美文字 完美王>

筆毛がほどよい硬さで、持ち軸は太いため握りやすく筆ペンを使い慣れていない人でも扱いやすい。
デメリットは筆先が割れやすさ。使い慣れている人にとっては、ハライやトメがまとまりづらい印象をうけました。初心者向けとしてオススメです。

穂先(ほさき)呉竹<美文字 完美王>の穂先
実際の宛名書き呉竹<美文字 完美王>の宛名書き
インクのにじみ にじまない。乾きにくい。
太さ 太・細字どちらも書ける。
濃淡 濃い黒が均一にしっかり出る。インクが自然と出てくるタイプなので、速く書くとかすれた文字になる。
硬さ ほどよい硬さ。
書きやすさ 筆軸がかなり太い(直径1cm以上)ので、持ちづらく書きにくい。

顔料インキで二種類(付属は標準、インクが多く出るタイプと標準がある)があります。

墨運堂・極

墨運堂<極>

カートリッジを押して墨量を調節するタイプ。

紙質にもよりますが、墨が少なすぎるとかすれた字になりやすいため、少し多めに墨を筆先に含ませたほうが書きやすいです。

穂先(ほさき)墨運堂<極>の穂先
実際の宛名書き墨運堂<極>の宛名書き
インクのにじみ にじまない。乾くには時間がかかる。
太さ 太・細字スムーズに書ける。
濃淡 墨屋さんが作った筆ペン専用の墨液を使用しているので、墨色が美しい。均一の黒が出る。
硬さ 少しやわらかめ。扱いやすい方。
書きやすさ 若干ペン軸は太めだが、書きづらくはない。墨液なので少し粘りがある。

筆ペン専用墨液でスペアインキは別売りです。穂先全体をぬるま湯に漬け置きすると復元しやすい。

ゼブラ・筆サイン中字

ゼブラ<筆サイン中字>

同筆圧の線を書くことに適しています。
筆ペンがうまく扱えない人用のサインペン感覚で作られたもので、招待状には不向きです。

穂先(ほさき)ゼブラ<筆サイン中字>の穂先
実際の宛名書きゼブラ<筆サイン中字>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。すぐに乾く。
太さ 細い。筆ペンとあるがサインペン。太字は書けない。細字ですべて同じ太さのみ。
濃淡 黒いが濃くはない。ほぼ均一の色が出る。
硬さ とにかく硬い。ペン先がつぶれたらきれいな線は書けない。はらいの表現はできない。
書きやすさ サインペン感覚と表示しているので筆ペンではない。マジックと同じ感覚。

水性顔料(カーボンインク)。スペアインキは付属してありません。

ゼブラ・筆サイン 太細両用

ゼブラ 筆サイン(太・細両用)

軸両端に太字用と細字用が分かれています。
厳密には筆ペンではないため、招待状の宛名書き用途としては不向きで、非常に書きづらいです。

太字

穂先(ほさき)ゼブラ<筆サイン>の太字の穂先
実際の宛名書きゼブラ<筆サイン>の太字の宛名書き

細字

穂先(ほさき)ゼブラ<筆サイン>の細字の穂先
実際の宛名書きゼブラ<筆サイン>の細字の宛名書き
インクのにじみ 少しにじみあり、乾きは速い。
太さ 太字は、それほど太くはなく、細字は適度に細く書ける。
濃淡 太字は濃いが細字は薄い。
硬さ 硬い。書いている間キュッキュッと音が鳴る。ゴムのような弾力があるので、思ったようにペン先が紙に当たらない。
書きやすさ 筆先が少し長い分、筆圧を加えると想像していない反り返りと反発があるので、思っているような線が書けない。使いこなすのは難しい。

水性染料タイプ。招待状の筆ペンではありません。

パイロット・筆まかせ細字ブラック

パイロット<筆まかせ細字ブラック>

硬筆の分類なので、書類を書くとき等に使うペン。
招待状には不向きで、筆使いが苦手な方用の硬筆入門向けのペンです。

穂先(ほさき)パイロット<筆まかせ細字ブラック>の穂先
実際の宛名書きパイロット<筆まかせ細字ブラック>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。すぐ乾く。
太さ 細い。斜めに傾けて書くとやや太くなる。ペンを立てて持つと極細の均一な線になる。
濃淡 それほど濃くない。速く書くとかすれる。
硬さ 筆が苦手な人でも書きやすいハードチップなので硬い。弾力全くなし。
書きやすさ 多少のおさえ・はらいが筆ペンのように書けるだけ。

水性インキ。招待状の筆ペンではありません。

パイロット・小筆硬筆

パイロット<小筆硬筆>

硬筆ペンの中では毛筆っぽく少し太く書けるだけ。硬筆ペンは招待状には不向きです。

穂先(ほさき)パイロット<小筆硬筆>の穂先
実際の宛名書きパイロット<小筆硬筆>の宛名書き
インクのにじみ 少しにじみあり。すぐには乾かない。
太さ 硬筆の分類では、おさえは太く、はらいは細く書ける。基本は同じ太さの線のみ。
濃淡 濃くしっかり均一に出る。
硬さ 硬いがペン先に弾力がある。
書きやすさ 筆先は短いが弾力があるので、少し書きにくいかも。

水性染料タイプの直液式(スペアインキなし)。こちらも招待状の筆ペンではありません。

パイロット・筆まかせブルーブラック

パイロット<筆まかせブルーブラック>

あくまで硬筆ペンのため招待状には不向き。事務用には向いてる筆ペンです。

穂先(ほさき)パイロット<筆まかせブルーブラック>の穂先
実際の宛名書きパイロット<筆まかせブルーブラック>の宛名書き
インクのにじみ にじみなし。すぐ乾く。
太さ 極細。弾力なし。
濃淡 比較的均一な濃さ。黒ではない。濃青。
硬さ 硬い。一般的な水性ボールペンと同じ。
書きやすさ 一般的な書きやすさ。硬筆の中ではおさえの時に少し太い線が書けるだけ。

水性染料タイプの直液式(スペアインキなし)。こちらも招待状の筆ペンではありません。