【弁護士監修】再婚の婚姻手続きガイド

再婚の婚姻届は基本的に初婚と同じです。
書き方に多少の違いはありますが、必要な書類はまったく同じ。しかし手続き上の注意点があります。

とくに子連れの再婚は注意が必要です。
以下では再婚における婚姻届の書き方や婚姻時の各種手続き、さらに子どもの戸籍についても解説します。

本記事の監修

弁護士岡田 崇 先生

岡田崇法律事務所所長。民事・家事・刑事事件など幅広く多数の法律相談に携わっている。消費者問題や近年複雑化するインターネット関連の問題、親子の親権問題など個人相談者の目線に立った親切な相談対応が特徴。

[再婚の手続き]戸籍と筆頭者を正しく理解

再婚時の婚姻届を説明する上で、必要不可欠なのが戸籍と筆頭者です。
以下では、かんたんに戸籍と筆頭者について説明します。

戸籍とは?

戸籍謄本の請求手続きの書類

戸籍とは、生まれてから死ぬまでの身分を登録し公的に証明したもの。
身分とは、出生や死亡の他に結婚や親族関係を含んでいるため、婚姻届にも戸籍が深く関係しています。

戸籍の大原則
  • 一人は一つの戸籍にしか登録できない
  • 戸籍は家族単位で構成される
  • 戸籍には一人の筆頭者(代表者)が必ず登録されている
  • 一戸籍に一姓である

戸籍法という法律で戸籍の作成や手続きが定められているよ

婚姻時に戸籍の考え方が重要なわけ

戸籍法では、原則として『一組の夫婦』『その夫婦と同じ氏をもつ未婚の子』を編成単位として戸籍が作られます。

戸籍のイメージ戸籍のイメージ

複数の夫婦が同じ戸籍に入ることはできません
一般的に結婚前(初婚)は、ご両親の戸籍に入っていますが、結婚後は新しい戸籍を作ったり、再婚相手の戸籍に入ります。

結婚前の戸籍と結婚後の戸籍

注意点

法律上、ひとつの戸籍にしか所属ができません。
また結婚や離婚、再婚をすると戸籍の変更や異動が生じます。

戸籍の筆頭者とは?

婚姻届の筆頭者を選ぶ欄婚姻届の筆頭者を選択する欄

筆頭者とは、戸籍の最初に記載されている人のこと。
ひとつの戸籍の筆頭者は必ず一人であり、イメージとしては代表者のようなものです。

仮に筆頭者が亡くなっても変わることはなく、さらに同一戸籍内での筆頭者は変更できません

戸籍では「どの戸籍に入っていて誰が筆頭者なのか?」が大切だよ

離婚をした場合の戸籍と筆頭者

離婚届と結婚指輪

離婚すると戸籍の登録内容が変更されます。
前妻や前夫との戸籍で「筆頭者か?筆頭者以外か?」により、離婚後の戸籍の変更に違いがあります。

以下は、結婚前(初婚前)から結婚・離婚後の戸籍の違いです。
わかりやすくするため、夫を筆頭者としていますが、筆頭者は夫でも妻でも構いません。

離婚後の戸籍の種類

  • 夫(筆頭者)

    離婚前の戸籍のままとなる。

  • 妻(筆頭者以外)

    結婚前の両親の戸籍に戻る。自分を筆頭者として新しい戸籍を作ることも可能。

  • 子ども(筆頭者以外)

    離婚前の戸籍のままとなる。妻が親権者でも「氏の変更手続き」をしなければ同じままのため、戸籍と氏の検討が必要。

続いては再婚時の手続き内容と注意点を説明するよ

再婚時の手続き一覧と注意点

再婚では婚姻届の他にも手続きが必要です。
また初婚と違って女性には、再婚ができない期間があります。

再婚禁止期間とは?

カレンダー

再婚禁止期間は民法で定められています。
一部を除いて、この期間内に婚姻届を提出しても受理されません。

第733条(再婚禁止期間)
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合

二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

禁止期間は離婚成立日から100日
以前は6ヶ月でしたが、2016年に法改正され大幅に短くなりました。

禁止期間があるのは『子の身分関係』を守る目的があるからです。
そのため、医師による以下の証明書があれば、禁止期間内でも婚姻できます。

  • 離婚時に妊娠していない証明書
  • 離婚後の出産証明書

上記の他に、前妻や前夫との再婚や失踪宣言を受けての離婚なども禁止期間はありません。

再婚時の主な手続き一覧

書き込む男性と見守る女性

再婚時の主な手続きは以下の7つです。
下記の他に引っ越しと伴う場合は、住所変更の手続きも必要になります。

再婚時の主な手続き一覧
書類・手続き 内容
婚姻届 本籍地以外に提出する場合のみ『戸籍謄本』を用意しましょう。
各種名義変更(氏名) 姓が変わる方は銀行口座や運転免許証、パスポート、クレジットカードなどの名義変更が必要です。
会社関係手続き 『婚姻届受理証明書』が必要な会社もあるので、事前に確認して必要なら婚姻届提出日に取得しておくと二度手間になりません。
転籍届 戸籍に前妻や前夫の情報を記載させたくなければ転籍届が必要です。
入籍届 子どもが養子にはならないけど、再婚相手の戸籍に入れたいなら必要です。
養子縁組届 子どもを再婚相手の養子にするときに必要。認められれば筆頭者の姓となります。
子どもの氏の変更 子どもが養子にはならないけど、再婚相手の名字にしたい場合に必要です。

転籍届の意味と目的

戸籍には婚姻や離婚など履歴が記載されます。
前妻や前夫との離婚が戸籍に残るため、気分的に嫌な人もいるはずです。

もし戸籍に前妻や前夫を記載させたくなければ、転籍で表記されなくなります

転籍した場合と転籍しない場合の戸籍謄本

注意点

戸籍謄本を使う場面は人生でも数える程度。
再婚は珍しくなく隠すこともできないため「どうしても気になる」場合のみ検討してみてください。

子連れの再婚で確認&検討すべきこと

手を繋ぐ母と子

子連れの再婚は少し複雑です。
詳しくは再婚時の子どもの戸籍の手続きで説明していますが、養子にする・しないで手続きが異なります。

養子にする
  • 婚姻届
  • 養子縁組届書
養子にしない
  • 婚姻届
  • 入籍届(※)
  • 子どもの氏の変更(※)

※の入籍届と子どもの氏の変更は希望者のみ手続きが必要です。

過去の離婚を隠せるか?

再婚相手に離婚歴を隠したい人もいるかもしれませんが……

完全に消すことはできません
転籍や分籍などで、戸籍謄本(現在戸籍謄本)への記載はされませんが、離婚歴が消えるわけではありません。

「いつかバレるかも」
とビクビクしながらの夫婦生活は辛いもの。長く結婚生活を送るためにも、この時点で打ち明けてはいかがでしょうか?

年度別の再婚率のグラフ年度別の再婚率のグラフ

再婚率は、年々上昇しています。
10年ぐらい前からは、ほぼ横ばいで4組1組は再婚のため、決して珍しくはなく、早い段階で打ち明けるのがオススメです。

再婚時の婚姻届の書き方

初婚でも再婚でも基本的な婚姻届の書き方は同じです。

[実例]婚姻届の記入方法

婚姻届の記入例(縮小版)(画像クリックで拡大表示されます)

再婚の婚姻届の違いは『婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍』と『初婚・再婚の別』の二箇所だよ

婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍

再婚後に名乗る姓と本籍地を記入します。
本籍地は、存在する地番であれば日本全国どこでもかまいません。

筆頭者の夫の氏を名乗る書き方

再婚の婚姻届の書き方「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍(夫がすでに筆頭者のケース)」

筆頭者ではない夫の氏を名乗る書き方

再婚の婚姻届の書き方「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍(現在、夫が筆頭者ではないケース)」

POINT

すでに筆頭者である人の姓を再婚後に名乗る場合、新本籍は記入しません。
再婚相手と話し合って「婚姻後に名乗る姓」と「新本籍」を決めましょう。

初婚・再婚の別

死別または離別した日付を正確に記入します。
わからなければ戸籍謄本で確認できますが、転籍や分籍で記載がなければ、役所の窓口で確認しましょう。

夫が再婚、妻が初婚の書き方例

再婚の婚姻届の書き方「初婚・再婚の別(男性が再婚・女性は初婚)」

夫が初婚、妻が再婚の書き方例

再婚の婚姻届の書き方「初婚・再婚の別(男性は初婚・女性が再婚)」

POINT

3度以上の結婚なら直前の離別日を記載します。

[パターン別] 再婚時の婚姻届の書き方例

再婚後に「どちらを筆頭者にするか?」で、手続きや注意点が異なります。
婚姻届の提出時は、現在の戸籍を把握する必要があるため、現在の戸籍がわからなければ、戸籍謄本を請求して確認しましょう。

再婚時の婚姻届の書き方パターン
手続き内容表示 現在の戸籍 再婚相手 再婚の筆頭者
パターン1 筆頭者 初婚 自分
パターン2 筆頭者 初婚 再婚相手
パターン3 筆頭者 再婚 自分
パターン4 筆頭者 再婚 再婚相手
パターン5 筆頭者ではない 初婚 自分
パターン6 筆頭者ではない 初婚 再婚相手
パターン7 筆頭者ではない 再婚 自分
パターン8 筆頭者ではない 再婚 再婚相手

パターン1

現在の戸籍 あなたが筆頭者
再婚相手 初婚
再婚後の筆頭者 あなた

婚姻届の書き方

現在の戸籍に再婚相手が入ります。
特別な手続きは不要で、婚姻届を提出するだけで構いません。

注意点

婚姻届の新本籍の欄は記入せずに、氏はあなたにレ点をいれましょう。

パターン2

現在の戸籍 あなたが筆頭者
再婚相手 初婚
再婚後の筆頭者 再婚相手

婚姻届の書き方

婚姻届に新しい本籍を記入し提出します。
氏を再婚相手の名前にすることで、再婚相手を筆頭者とした新しい戸籍がつくられます。

注意点

あなたの現在の戸籍が単身なら、現在の戸籍からは除籍となり、元の戸籍へは戻れません。

パターン3

現在の戸籍 あなたが筆頭者
再婚相手 再婚
再婚後の筆頭者 自分(あなた)

婚姻届の書き方

現在のあなたが筆頭者の戸籍に、再婚相手が入ることになります。
婚姻届の新しい本籍欄は空欄にし、氏はあなたにチェックを入れます。

注意点

再婚相手が単身戸籍の場合、除籍となるため元の戸籍には戻れません。

パターン4

現在の戸籍 あなたが筆頭者
再婚相手 再婚
再婚後の筆頭者 再婚相手

婚姻届の書き方

再婚相手の戸籍にあなたが入ることになります。
婚姻届の新しい本籍欄は空欄にし、氏は再婚相手にチェックを入れます。

注意点

あなたが単身戸籍なら全員除籍となり、元の戸籍には戻れません。

パターン5

現在の戸籍 筆頭者ではない
再婚相手 初婚
再婚後の筆頭者 自分(あなた)

婚姻届の書き方

初婚と変わらない書き方です。
新本籍欄を記入し、氏はあなたにチェックを入れます。

パターン6

現在の戸籍 筆頭者ではない
再婚相手 初婚
再婚後の筆頭者 再婚相手

婚姻届の書き方

パターン5と同じく初婚と変わりません。
新本籍を記入し、氏は再婚相手にチェックをいれます。

パターン7

現在の戸籍 筆頭者ではない
再婚相手 再婚
再婚後の筆頭者 自分(あなた)

婚姻届の書き方

新しく戸籍をつくることになります。
新本籍を記入し、氏はあなたにチェックをいれます。

注意点

再婚相手は現在の戸籍から除籍されます。
また再婚相手が単身戸籍なら、元の戸籍には戻れません。

パターン8

現在の戸籍 筆頭者ではない
再婚相手 再婚
再婚後の筆頭者 再婚相手

婚姻届の書き方

再婚相手の戸籍にあなたが入ります。
新本籍は空欄、氏は再婚相手にチェックをいれます。

再婚時の子どもの戸籍の手続き

手を繋ぐ子どもと親の手

子どもの戸籍も手続きを忘れないように!
前夫や前妻との間に生まれた子ども(嫡出子)の戸籍は、あなたが再婚をしても手続きをしなければ変わりません

以下では子どもの戸籍の手続きについて説明しているよ

離婚をしたときの子どもの戸籍はどうした?

何も手続きをしなければ離婚前の筆頭者の戸籍のまま
新しく戸籍をつくり、子どものの戸籍も変更しているなら家庭裁判所へ『子の氏の変更許可』の申し立てをおこなっているはずです。

離婚後の子どもの戸籍のイメージ

注意点

親権と戸籍は別の話です。
たとえば、親権が妻にあっても、子どもの戸籍は夫であることは少なくありません。

再婚後の筆頭者で手続きは変わる!

手をつないで歩く親子

子どもの戸籍は「どちらの戸籍に入るか?」がポイント!
再婚相手を筆頭者とした戸籍に入るなら、養子縁組をする・しないの判断をしなければなりません。

あなたを筆頭者とする戸籍なら手続き不要


あなたの戸籍 あなたが筆頭者
子どもの戸籍 あなたと同じ
再婚後の筆頭者 あなた

上記のパターンなら特別な手続きは不要です。
ただし養子縁組は別の話のため、再婚相手と相談して決めましょう。

注意点

もし子どもの戸籍が前妻または前夫で、再婚を機に戸籍を変えるなら、家庭裁判所へ『子の氏の変更許可』の申し立てをおこなわなければなりません。

再婚相手を筆頭者とした戸籍に入るケース

子どもが再婚相手を筆頭者とした戸籍に入るケースでは「養子縁組をするか?」で手続きが変わります。

再婚時の養子縁組をする・しないのイメージ

養子にしない場合の手続き

「養子縁組はしないけど、同じ名字や戸籍にしたい」

上記のような「子どもを再婚相手と同じ戸籍にいれたい」ケースでは、入籍届と子どもの氏の変更の手続きをおこないます。

  • 入籍届

    再婚相手の戸籍に子どもを入れたいときに提出する

  • 子どもの氏の変更

    子どもの名字を再婚相手とあなたと同じにしたい場合に提出する

手続きの流れ

  1. 婚姻届の提出
  2. 子の氏の変更許可の申し立て(家庭裁判所)
  3. 入籍届の提出(市区町村役場)

養子縁組の手続き

養子縁組とは、法的に親子関係を発生させる手続きです。
あなたの子どもと、再婚相手の間に親子関係が成立すると、名字は同じになり扶養義務や相続権が発生します。

再婚では普通養子縁組を行うケースが多いようです。

提出書類

  • 養子縁組届
  • 戸籍謄本(※)
  • 家庭裁判所の許可書謄本(未成年の場合)

※本籍地以外の市区町村役場に提出する場合のみ必要です

届出先

養親もしくは養子の本籍地または住所地の市区町村役場

※届け出をする人は15歳以上なら本人、15歳未満なら法定代理人(親権者)となります

Check!

普通養子縁組ではなく、特別養子縁組は実親との親子関係を断ち切る制度です。
年齢制限(15歳未満の子ども)や家庭裁判所の許可などハードルは高いといわれています。

婚姻届の提出後に、養子縁組の手続きをするとスムーズだよ

1分で振り返り
この記事のまとめ

アンシェくん
  • 原則、女性は離婚後100日以内の再婚できない
  • 再婚の手続き(婚姻届の提出)そのものは初婚と大きく変わらない
  • 子連れ再婚では養子縁組をするか?しないか?で手続き内容が変わる
  • 養子縁組をしなくても子どものの名字や戸籍は変更できる(家庭裁判所や市区町村役場が認めれば)

再婚でも初婚と手続きは大きく変わりません。
子連れ再婚だと子どもの戸籍をどうするか?が大切になるため、事前に再婚相手と話し合って決めておきましょう。

記事No.aw100