今回、いただいたご質問は法律的な見解が必要なため弁護士の大江哲平先生にお話を伺いました。

大江 哲平先生
大江哲平

2002年から特許事務所で翻訳者(日英、英日)、弁理士として勤務。
その後、松下電器産業(現パナソニック)株式会社・知的財産部門勤務、法律事務所勤務を経て株式会社IP Bridge所属(弁護士登録番号 45432)。

新郎新婦さまからの質問

今回はキャンセル料でお悩みの新郎新婦さまからいただいた質問です。元ウェディングプランナーの土屋が、大江先生に伺います。

契約前の説明と、契約後の説明に異なる部分が多くキャンセルをしようと考えているのですがキャンセル料の提示がかなりの高額です。そもそもキャンセル料を支払わなくてはならないのでしょうか?

元ウェディングプランナー土屋のイラスト土屋

結婚式では、契約前に2~3時間程度の式場説明で契約を行い、その後は平均で約10カ月をかけて結婚式の準備をすすめます。契約後の打ち合わせの中で事前に説明がされていなかったり、契約前の見積りと実際に必要な内容の金額が異なることがあります。このような事が続くと新郎新婦さまは結婚式場に対して不信感を持ち「キャンセル」という選択を考える人も少なくありません。しかし、キャンセルをすると式場は「キャンセル料」を新郎新婦さまに請求します。このキャンセル料も「数十万」と高額を請求することがあります。キャンセル料金に関しては一般的な定めがないため結婚式場側が優位に設定されるケースが多いようです。このようなケースで消費者を保護するような法律はございませんでしょうか?

弁護士の大江先生大江先生

消費者契約法は、違約金(キャンセル料)の定めを制限しており、キャンセルの理由や時期に応じ、キャンセルによって「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合には、その超える部分のキャンセル料は無効となります。

元ウェディングプランナー土屋のイラスト土屋

キャンセルによる結婚式場側の実際の損害は、キャンセルした段階ではわからないので平均的な損害とされているわけですね。

弁護士の大江先生大江先生

キャンセルする時期によっては、結婚式場側も新しい新郎新婦さまと契約することが可能となります。新たに別の新郎新婦さまと契約するのであれば実質的な結婚式場側の被害はないと考えられます。このようなケースの結婚式場のキャンセル料は不要なのでしょうか?

元ウェディングプランナー土屋のイラスト土屋

はい、したがって、契約上定められているキャンセル料が、キャンセルの際に結婚式場がこうむる一般的な損害の額を超える場合には、その超える部分についてのキャンセル料は支払わなくてもよく、仮に支払ってしまったときは返還を請求できることになります。

弁護士の大江先生大江先生

実際の裁判例でも、東京地方裁判所平成17年9月9日判決は、挙式の1年以上前にキャンセルしたケースにおいて、一般的な損害として具体的な金額を見積もることはできないとして、10万円のキャンセル料を定めた契約条項を無効と判断しました。

元ウェディングプランナー土屋のイラスト土屋

新郎新婦さまは、こうした内容に違法性を察知したとしても、なかなか結婚式場に言い出せないのが現状です。特に、契約後にゲストに招待状を送ってしまったりすると後には引き返せないので泣き寝入りすることが多いです。 仮にこういった事が違法性があるとして、そういったことを是正して結婚式を実施するように式場にうまく伝える方法はございますでしょうか?

弁護士の大江先生大江先生

消費者問題に詳しい弁護士に相談するか、まずは国民生活センターが案内している相談窓口(国民生活センター)に相談してみることをおすすめします。